古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』【53】

―「神話部分」を読む ― 三貴子の分治 ②

次に月讀(つくよみの)命に詔りたまはく。
「汝命(ながみこと)は、夜(よる)の食(を)す国をしらせ」と
事依(ことよ)さしたまひき。

次にツクヨミの命に向かって仰せられた。
「お前は夜の世界を治めよ」と
お命じになった。

夜之食国
食国=天下の総称
食(おす)=受け入れ治めるという意味
夜之食=夜・闇を受け入れ治める
夜之食国=夜の世界

ところで日の神は昼・月の神は夜を管理しており、共に高天原にいるのであってこの国土にいない。
それなのに食国(おすくに)=天下と表現しているのは、何故だろうか?

国というのは○○の国・××の国のように界限(かぎり)を前提とした考え方である。イザナギの命が言う国は子孫が管理する全てであることから、
(管理する)範囲を神代の世界にまで広げたのであろう。
だから陽の光が及ぶ全世界=天下の総称として食国と云ったのであろう。

次に建速須佐之男(たけはやすさのをの)命に詔りたまはく。
「汝命(ながみこと)は、海原をしらせ」と
事依(ことよ)さしたまひき。

次にスサノヲの命に向かって仰せられた。
「お前は海原を治めよ」と
お命じになった。

三柱の御子神たちに治めさせたのは以上の如くであるが、
古事記は天の下の世界(=地上)の主たる神としてこの三柱を出現させた。
ということは、本来はこの三柱は共に地上の神である。

しかしながら(イザナギは)月日の二神は善なる御子であることから、
「いつまでも地上に置くのはよくない」として、天界を管理させたのである。

スサノヲに対しては、「お前は悪い奴だから日の当る所に居る事はならぬ」と地底の世界に追いやった。
(イザナギによる)この措置は、地上界には三神ともいない状態ということになる。

実は、この時点でこのような状況にしたのには、深い理由がある。
あとで「豊葦原の瑞穂の国は、私の子供が支配する所」と(高天原=昼を管理する)天照大御神が告げ、彼女の子孫が支配することになるからである。

さて最終的には、月日の神は善なる天界に、スサノヲは悪なる地底界に行く。
その善なる神と悪なる神の御誓(みうけひ)で誕生する子供の子供(ニニギの命以後の子孫のこと?)が、
この地上界を永く支配することになるのにも深い理由がある。

この世の始まりの段階から(アマテラスの子孫である)天皇の子孫がこの国を治めることが運命付けられていたのである。

多くの人が、人の行動から神代を語るが、
学者知識人の多くが天地創造の頃からの摂理を理解することができず、
一般の人々に間違った解釈を説いているのは、
全て中国思想に浸りきっているからである。

私は神代を理解することで、人の世がどうなるかを知る。
分かり易く言えば、
時代々々や時々に大小の良い事や悪い事が次々に生じるが、
それらは全て神代の始まりの摂理によるものである。

この摂理は、女男(めをの)大神の美斗能麻具波比(みとのまぐわひ)、島々や神々の出産、三柱の貴(うづ)の御子神に職務を与えるところまでに出来上がっている。
この間の経緯により、人の世の摂理を理解すべきなのである。

それはまず美斗能麻具波比(みとのまぐわひ)があってから、国々や神々誕生までは全て吉善(よごと)であった。
しかし火の神誕生によって母神が亡くなったことは、世の凶悪事(まがこと)の始めである。

火は重要なものであり、火の神の血から現れた神々も重要であるから、火の神の誕生は吉善(よごと)である。
人が凶悪事(まがこと)が原因で死ぬのは、
イザナミの死は凶悪事であり、凶悪事は死につながるという理屈による。
死の理由は、病であれ何であれ、全て凶悪事である。

以上の如く火の神は吉と凶を兼ねているから、この神の誕生が吉・凶の境である。
火は非常に有用なものだが同時に物を滅ぼすのにこれ以上のものはないというのもこの理屈によるのだ。

・・・つづく

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