―「神話部分」を読む ― 天照大神と須佐之男命 ⑦ 天の石屋戸 – 2 –
故雖然為。
(かれ、しかすれども。)
ところがそのような行状に対して、
天照大御神者登賀米受而告。
(アマテラス大御神は とがめずて のり給はく。)
アマテラスは、諫めることなく言った。
如屎。醉而吐散登許曾。
(くそなすは、えひて はきちらすとこそ。)
糞に見えるのは、酒に酔ってもどした嘔吐物で、
我那勢之命、為如比。
(あがなせの命 かくしつらめ。)
私の弟がしたようだ。
又離田之阿埋溝者。
(また、田のあ はなち、溝うむるは。)
また田の畔を壊したり溝を埋めたりしたのは、
地矣阿多良斯登許曾。
(ところを、あたらし とこそ。)
土地がもったいないと思い、
阿多良斯=惜しい
我那勢之命。為如比登詔雖。
(あがなせの命 かくしつらめと のりなほし給へども。)
私の弟はあのようなことをしたのであろうと、取り繕ったが、
猶其悪態不止而轉。
(なほ そのあしきわざ やまずて うたてあり。)
悪行は収まらず一段と激しくなった。
天照大御神、坐忌服屋而。
(アマテラス大御神 いみはたやに、ましして。)
アマテラスが神聖な機織り小屋に行き
忌服屋=神の衣を織る機織りの建物
令織神御衣之時。
(かむみそ、織らしめ給ふ時に。)
神に献上する衣を織らせているとき、
穿其服屋之頂。
(そのはたやの、むねを、うがちて。)
機織り小屋の屋根に穴をあけて
逆剥天斑馬剥而所堕入時。
(あめのふちこまを、さかはぎにはぎて おとしいるる時に。)
まだら模様の馬の皮を尾の方から剥いで投げ込んだ時に
天衣織女見驚而。
(あめのみそおりめ見おどろきて。)
機織り女がそれを見て驚き
於梭衝陰上而死。
(ひにほとをつきて みうせき。)
機織道具が陰部に突き刺さって死んだ。
・・・つづく
※注:
青字 … 本居宣長『古事記伝』より