もしも古事記の神々が人間だったら・・・【15】

スセリヒメ≪その二≫

二人とも、というよりは、スセリ姫はワイルドですね。
一目見て、「こいつはいい!」となれば、あとさき考えないで一気に突き進んでいます。それだけなら、あちこちにごろごろ居る今どきの「無責任な若者」と同じです。
ところがスセリ姫の場合、これからあとが違います。

惚れた男を、とことん守るのです。
ここからは彼女を『妻』と表現していますから、深い関係になってから大王であり父であるスサノヲに紹介したのです。
でもスサノヲは、娘の言動から全てをお見通しです。

娘の婿になるということは、自分の後継者(今風にいえば二代目社長)になることを意味しますから、簡単に「いいよ」とは言いません。
娘婿として後継者となるのにふさわしいかどうか、テストをするのです。
まず、「今夜はここで寝ろ」と『蛇の室(むろ)』へ入れます。
『蛇』と書いてありますが、普通の蛇なら気持ち悪いだけで危険はありませんから、テストにはなりません。
その部屋は、『噛まれたら死ぬ蛇(=まむし)』がうようよいる穴のようなところだったと思われます。

入るだけでも気持ちが悪いのに、そこで一晩寝なければならないのですよ。
普通の蛇は、人や獣が近づくと逃げます。
でも、まむしは逃げず、一定距離以上に近づくと襲ってくる習性があります。
ですから、そこで寝ることは遅かれ早かれ「死ぬこと」を意味しているのです。
八十神達に命を狙われ、もはや逃げ場の無いオオナムジですが、
「やばいことになったな・・・ついその気になって手を出したのは、失敗だった」
とでも思ったかもしれません。
部屋に入れと命じたのは、誰もが恐れる大王スサノヲです。
オオナムジは「どうにでもなれ!」と、部屋に入る覚悟を決めたのではないでしょうか。

そこへ、スセリ姫が何気なく寄ってきて
「これを・・・蛇を見たら、これを振りなさい。蛇は退散します」
とささやきながら、比礼(ひれ)を渡しました。
「比礼」とは、「竜宮城のお姫さまが首にかけている」長めのスカーフのようなものだそうです。
古代を描いた絵によくありますが、身分の高い女性が首から垂らしている薄い布で、霊力があると信じられていたそうです。

スセリ姫は、初めて惚れた男=オオナムジを助けようと、手を貸したのです。
父親にバレれば、オオナムジは即刻首をはねられ、自分だってどうなるか分からなかったはずです。
スセリ姫は、そのような危険に平然と挑む女性なのです。

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