火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)
=火之夜芸速男神(ひのやぎはやおのかみ)・火之炫毘古神(ひのかがびこのかみ)
火の神です。この神の出産でイザナミは陰部に火傷を負い、それが原因で亡くなります。つまり健康なイザナミが最後に生んだ神です。火傷療養中に、彼女の嘔吐物・糞・尿などからも神が生まれます。また妻の死を悲しむイザナギの涙からも神が生まれますが、省略します。
古事記は、イザナミの遺体埋葬地を「伯耆と出雲の堺の比婆の山」と記しています。
これに関して多くの解説が「黄泉の国を出雲国にあるとする思想」と関連があるとしていますが、「黄泉の国=出雲国」思想がなぜ生まれたかに関して納得させる解説はありません。
私は、「黄泉の国=出雲国」思想の背景には、古代出雲王国の存在を隠蔽しようとの意図があると考えています。
高天原族(後の大和朝)は、黎明期の日本(九州から諏訪地方まで)の中心であった古代出雲王国を謀略と武力で崩壊させ、アマテラスの次男であるアメノホヒを支配者として置いたのではないでしょうか。そして謀略の出雲側協力者をアメノホヒ配下に置き、戦後の出雲管理体制を構築していったと考えられます。高天原族は、中心を押さえれば周辺は従うと考えていたのでしょう。しかし古代出雲を中心として出来上がりつつあった黎明期日本の体制は、スサノヲの人徳により形成されていたのではないでしょうか。ですから出雲の武力制圧が、周辺の従属を促すものではなかったのでしょう。逆に「徳による秩序維持体制」を壊した者として、高天原族は忌み嫌われたのではないでしょうか。
高天原族の制圧過程の一つとして、景行天皇の項のヤマトタケルに関する記述が参考になります。彼のやり方は「卑怯」の一言に尽きます。
勝利のためにはどの様な手段でも使う高天原族が、人徳を得ることはできなかったはずです。他方、いまは亡きスサノヲ礼賛はますます強くなったのではないでしょうか。この風潮を止めるには、強権発動しかありません。具体的には、スサノヲを忘れさせることです。それには出雲地方そのものをも忘れさせなければなりません。ですから中心を出雲から遠く離れた奈良地方へ移し、出雲を遠い山並みの中に隠してしまったのではないでしょうか。人々を寄りつかせないようにするには、死者の世界に仕立て上げるのが最も効果的です。山陰(さんいん)という呼び方がいつ頃から存在するのか分からないのですが、古代出雲地方を山陰(やまかげ)の死の世界として人心から遠ざけたと考えられます。
これが「黄泉の国=出雲国」思想の実体かもしれません。
全国に「比婆山」と称する地は沢山あるようですが、古代出雲地方にも四カ所あることは「イザナミの御陵」の項で紹介しています。
そこでも述べましたが、イザナギは妻の死の原因を作ったカグツチの首を斬ります。
「お前を生んだことで女房が死んだ!」と激怒して、生まれたばかりのわが子を殺したのです。日本人の父たるイザナギですが、いまの感覚で言えば「激情をコントロールできない男」だったのです。これが理由かどうか分かりませんが、イザナミを祀る神社に比べてイザナギを祀る神社は少ないようです。
…つづく
古事記おじさま、今回の記事も熱い心全開なおじ様の想いがひしひしと伝わってくる記事でした。
そうですね。
私も、同じように感じます。
イザナミ様の御陵として、広島県のとある場所もありますね。
以前、その場所に出雲の帰りによってそこの神々様にごあいさつしようと思い、足を踏み入れたのですが、あまりにも恐いと申しますか…なんの力もない私ですが、怖くて先に進めなかった事があります。
そんな思いをしたことが無くて戸惑いましたが、その日は引き返し、まだ改めてお参りさせて頂けていません
カグツチ様は、スサノオと同一神様とお聞きした事があります。
真実など知るよしもありませんが、長い長い年月の間、消されたり加えられたり、また消されたりと…神々様方はどのようにお感じになられてるのかな…
私は、イザナミ様は国津神様だと思っています。
イザナギ様もまた、イザナミ様で様々な想いもおありだったと思います。
私はスサノオ様をお慕いしておりますので色々想いはありますが、それぞれのお立場でそれぞれのお辛い想いが神々様、おありだったでしょうね。
なんだか、意味不明なコメントごめんなさいです(汗)
ここを御覧の皆様、神々様へのそれぞれの熱い想いをコメントして頂けたら、また私も勉強になります。
おじ様、お忙しい中いつもありがとうございますです!
五十猛様の御陵についても色々ありますね
鬼神神社さんの奥の院の五十猛様の御陵といわれている場所にもご挨拶状に行かせて頂きました。
アジスキ様や、ミナカタ様の事も心にひっかかります。
コメントでは、上手く書けませんが、古事記おじさま! いつも神々様の御紹介、ありがとうございます!