会議が始まりますと、オモイカネに案を考えさせてアマテラスが言います。
「この葦原中国(あしはらのなかつくに=出雲地方)は、我が子オシホミミに統治を委任した国である。ところがこの国には、乱暴な国つ神(土着の者達)が多いようだ。誰を遣わして説得工作をすればいいだろうか?」
要は、高天原(=ヤマト勢力)が出雲地方を組み入れようとしたが、地元の連中の強硬な反対にあって、誰に説得交渉をさせればいいだろうかということでしょう。
相談の結果、アメノホヒを派遣することになりました。(このアメノホヒは、オシホミミと同じく、アマテラスとスサノヲの誓約で生まれたアマテラスの息子です。)
ところが彼は、大国主に「媚び付きて」、三年経っても連絡してこなかったのです。
この「媚び付きて」をどう解釈するかですが、「媚びへつらって」が文字通りの解釈です。
しかしアメノホヒは、高天原の重役会議で第一選抜された使者ですから、それなりの見識と度胸を持っていたはずです。
そのような者が簡単に媚びへつらうでしょうか?
事実は、譲渡交渉しに来たけれど、出雲が努力して造りあげた国を一方的に乗っ取ることに大義名分はなく、高天原の言い分に無理があると感じたのではないでしょうか。
同時に住んでみたらとても良いところで、大国主を始めとする指導層の考え方にも共鳴したのではないでしょうか。
ですから彼は、高天原を捨て出雲で骨を埋める気になったのでしょう。
これを知った高天原は怒り狂ったでしょう。
古事記は高天原を正当化するための書物ですから、アメノホヒの行動を「媚び付きて」と表現したのではないでしょうか。