古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』【78】

―「神話部分」を読む ― 大国主神 ② 稲羽の素兎 – 2 –

爾其随乾
其身皮悉風見吹折故。痛苦泣伏者。
(ここに、そのの 乾くまにまに
 その身の皮 ことごとに 風に 吹きさかえしからに。いたみて 泣き伏せれば。)

すると潮水が乾くにつれて、
皮膚が風に吹かれてひび割れ、苦痛で泣き伏していると、

最後之來大穴牟遅神。
見其菟言。何由汝泣伏。
いやはてに 来ませる オホナムヂの神。
 その うさぎを見て。なぞも いまし泣き伏せると 問ひたまふに。)

最後に来たオホナムヂの神がその兎を見て、「なぜおまえは泣いている」と尋ねた。

菟答言。僕在淤岐嶋。雖欲度此地。
無度因故。欺海和邇言。
(うさぎ まをさく。あれ オキノシマに ありて。このクニに わたらまく ほりつれども。
 わたらむ よし なかりしゆえ。海のワニを あざむきて、いひけらく。)

兎が言うには、「私はオキノシマにいて、この地に渡りたいと思いましたが、渡る術がなかったので、海のワニを騙して言いました。」

「淤岐嶋」 隠岐の国なり。
宣長は隠岐と因幡の距離を理解していなかったのでは?

吾興汝競欲計之多小。
(あれと、いましと、ともがらの おほき すくなきを、くらべむ。)

「私とお前の仲間は、どちらが多いか比べよう。」

故汝者。随其族在悉來。
(かれ いましは。そのともがらの ありのことごといて来て。)
自此嶋至干氣多前。皆度。
(この島より ケタノサキまで。みな なみふし わたれ。)

「だからお前は、居るだけの仲間を連れて来て、
この島から気多の岬まで全員を伏して並ばせろ。」

爾吾其上走乍度。
(あれ、その上を 踏みて 走りつつ 読みわたらむ。)
於是知興吾族多。
(ここに、あが ともがらと、いづれ おほきと いふことを知らむ。)

「私がその上を踏んで走りながら数えて渡ろう。
私の仲間とどちらが多いか分かる。」

如此言者。見欺而列伏之時。
吾蹈其上讀度來。今将下地時。
(かく、いひしかば。あざむかえて、なみふせりしときに。
 あれ、そのうへを、踏みて 読み渡り 来て。いま 土に降りむと する時に。)

そのように言うと、ワニが騙されて並び伏せたので、
私は数えながら渡って来て、まさに地上に降りようとする時に、

吾云汝者我見欺言竟
即伏最端和邇捕我。
剥我衣服。
(あれ、いましは あれに、欺むかえつ、と言ひ終はれば
 すなはち、いやはしに 伏せるワニ、あを 捕らえて。
 ことごとに、あが着物を 剥ぎき。)

私が「お前は私に騙された」と言い終わるや否や、
一番端に伏していたワニが私を捕らえて、
私の着物を全て剥ぎ取りました。

「我衣服」 毛の付いた皮の意味。ここでは人間に模して衣服としているのではないか。
また伎母能(きもの)とは膚を包み隠す物の名であって、人の着る衣服だけの名ではないかもしれない。

・・・つづく

※注:
青字 … 本居宣長『古事記伝』より
赤字 … 古事記おじさんの見解です。

カテゴリー: 古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』, 連載を読む タグ: , , , , , , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。