古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』【77】

―「神話部分」を読む ― 大国主神 ① 稲羽の素兎 – 1 –

故此大國主神之兄弟八十神
然皆國者於大國主神。
(かれ この大国主の神、あにおと やそがみ ましき
 しかれども みな 国は大国主の神に さりまつりき。)

さてこの大国主の神には兄弟神が沢山いたのだが、皆この国を大国主の神に譲った。

「兄弟」 これはあとで庶兄弟となっているので、異母(ことはら)であり「アニオト」と読む。同母の場合は「ハラカラ」。

「八十神(やそがみ)」 単に多いという意味。

「國」は、天つ神の高天原(=天)ではなく、この地上である国つ神の世界。
地上界は天界の下に位置するから、天の下=天下。

所以避者。
(さりまつりし ゆえは。)

譲った理由は、以下である。

「避(さる)」 競い争いしたが、(力)及ばず負けて退き去るという意味。

其八十神欲婚稲羽之八上比賣之
共行稲羽時。
(その ヤソガミ おのもおのも。 イナバの ヤカミヒメを よばはむの 心ありて
 ともに イナバに ゆきける時に。)

大勢の神々が、それぞれヤカミ姫に求婚しようとイナバに出かけた時に、

「稲羽(いなば)」は因幡(いなば)の国である。法美(はふみ)の郡に稲羽郷があるので、これから出た国名であろう。

「八上比賣(やかみひめ)」 因幡の国八上(夜加美)の郡があるから、それによる名である。またはその比賣がいた所だから地名になったのか?
どちらが先か分からない。

於大穴牟遅神負袋。爲従者往。
(オホナムヂの神に ふくろおほせ。ともびと として いて行きき。)

オホナムヂに袋を背負わせて、従者として連れて行った。

偉業を成し遂げる人物は小さなことにはこだわらないから、どのような扱いを受けようが意に介さない。つまり大器であることを表している。
次の手間山の一件も同様である。

宣長は、これらのエピソードはオホナムジが天下人になる片鱗を見せているとしています。

於是到氣多之前時。伏也。
(ここに ケタノサキに いたりける時に。あかはだなる うさぎ ふせり。)

気多の岬に来た時に、丸裸の兎が倒れていた。

「氣多之前(けたのさき)」 因幡の国 気多(けた)の郡の海辺の岬である。

爾八十神謂其菟云。
(ヤソガミ その うさぎに いひけらく。)

これを見た神々がその兎に言った。

将爲者。浴此海鹽。當風吹而。伏高山尾上
(いまし せむは。この うしほを あみ。風の 吹くに あたりて。たかやまの をのへに 伏してよ といふ。)

「(その体を治したければ)この潮水を浴び、風にあたって、山の頂に寝ておれ。」

故其菟従八十神之而伏。
(かれ その うさぎ、ヤソガミの をしふる ままにして、ふしき。)

そこで兎は神々が教えた通りにして、横になっていた。

・・・つづく

※注:
青字 … 本居宣長『古事記伝』より
赤字 … 古事記おじさんの見解です。

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