アメノホヒを見限った高天原は、次の使者を派遣します。
オモイカネはアメノワカヒコを推薦し、彼に弓矢を与えて向かわせたのです。
ところが彼は、大国主とタギリ姫の娘であるシタテル姫を妻にしてしまい、八年経っても音沙汰がありません。古事記は、「彼は大国主の後継者になろうと考えた」と説明しています。
そこでアマテラスとタカミムスヒは、会議を招集して「誰かを行かせて、帰ってこない理由を聞かせよう。誰が良いだろうか」と尋ねます。
ここでもオモイカネが「雉の鳴女(なきめ)」を推薦し、ワカヒコに、「お前を遣ったのは、乱暴な土着の連中の説得だぞ。なぜ八年も帰ってこないのか」と聞いてこいと命じます。
鳴女は、詳細に命じられた通りを伝えます。
これを聞いたアメノサグメが「この鳥の声は不吉ですから、射殺しなさい」と勧め、ワカヒコは高天原からもらった弓矢でその雉を射殺してしまいます。
この矢は、雉を貫いて高天原にまで届き、矢を見たタカミムスヒは「ワカヒコに邪心がなければ彼に当たるな、邪心あらば当たれ」と言って投げ返します。
矢は寝ているワカヒコの胸に刺さり、彼は死んでしまいます。
アメノホヒは、三年間音信不通でしたが、出雲での彼の状況の紹介はなく、処罰されたとは書かれていません。ところがアメノワカヒコは、出雲での行状を紹介し、殺します。
アメノホヒは、命令に従わなかったが反逆行為はないのでお咎めなしです。しかしアメノワカヒコは、反逆行為ありということで、殺されます。
「話し合いで譲れと要求しているのに、使者に反逆させるから血を見るのだ」といった感じでしょうか。
…つづく
アメノサグメは、天の邪鬼のことだと、サラリと言われた事が有るのですが、たしか、天の邪鬼の話って、本当に有ったようなリアルで怖い話だった気がします。ここには、どのような意図があるのでしょうか。気になります。
>エクス・アドメディアさん
コメントありがとうございます。
「天の邪鬼」は仏教思想によるもので、元々の神道思想にはなかったはずです。
ワカヒコは、アメノサグメの示唆により高天原(=天上界)の使者を殺したのですから、サグメは天に邪する者となります。
これは悪しき者ですから仏教思想では「鬼」の範疇に入れることができます。
ですから仏教思想渡来後、サグメ=天の邪鬼と解釈するようになったのではないでしょうか。
古事記を素直に読みますと、サグメはワカヒコの側に侍る忠実な密偵です。
その意見をワカヒコがすぐさま取り入れたということは、過去の経緯から信頼していたためと考えられます。
しかし、高天原からすれば邪魔者ですから、高天原寄りの記述は悪い表現へエスカレートしたのではないでしょうか。
究極の悪い表現が「天の邪鬼」で、仏教説話の「天の邪鬼」と重なってしまったと考えます。
>古事記おじさんさん
スッキリしました。
仏教のことは考えませんでした。
なるほどです。
ご丁寧なお応え、ありがとうございます。
また、うるさい質問するかもしれませんが、
宜しくお願いします。