もしも古事記の神々が人間だったら・・・【6】

アマテラス ≪その三≫

ところが「アマテラス大御神の命(みこと)もちて=アマテラスの指示により」高天原の将来を託されて出かけたアメノオシホミミは、出雲勢の抵抗を受けて無様にも引き返してきたのです。
これを知ったアマテラスは、顔面蒼白になったことでしょう。
アマテラスが自信を持って送り出した息子は凱旋帰国して当然だったのです。
ところが敗退し高天原に帰ってきたのですから・・・・

息子の失態ではありますが、重臣達のアマテラスに対する態度に変化が現れたようです。
古事記の記述に、微妙な変化が生じ始めるのです。

まず「どうするか」についての場面です。
アマテラスが「皆を集めよ!」と、先頭に立って指揮しているイメージではありません。
「タカミムスヒの神、アマテラス大御神の命(みこと)もちて・・・」と書かれています。
アメノオシホミミを行かせる時にはアマテラス一人の命令でした。ところがここでは、タカミムスヒとアマテラスの二人の命令に変わっているのです。
通常、命令を出した人を書く場合、力と地位の高い者が先に書かれます。
この書き方では、タカミムスヒが上となります。
またその会議も、アマテラスが主導しているイメージではありません。
理由は、会議の結論を出したのはオモヒカネの神と記述されているだけだからです。「オモヒカネの進言を参考にして、アマテラスが決定した」とは書かれていないのです。

この場面を想像してみてください。
「アマテラスが最上段に座って議会を取り仕切っている」様子が思い浮かぶでしょうか?
私には、「最上段のアマテラスの席は空席状態で、タカミムスヒが会議を取り仕切っている」様子が浮かんできます。
会議の結論は「交渉人を派遣する」で、アマテラスの次男アメノホヒが派遣されます。
ところがホヒは帰ってこず、またもや会議が招集されます。
「タカミムスヒの神、アマテラス大御神、問ひたまひしく」と書かれています。「タカミムスヒとアマテラスがお尋ねになりました」ということですが、ここでも先に書かれているのはタカミムスヒです。

この会議で、交渉人二号の派遣が決まります。
今度はアマテラスと血縁関係のないアメノワカヒコです。
ところがワカヒコは大国主の娘シタテル姫と一緒になってしまい、帰ってきません。
そこでまたまた会議が招集されます。
「アマテラス大御神、タカミムスヒの神また問ひたまひ」と書かれています。
今度はアマテラスが先に書かれています。
もう順番などどうでも良いということなのでしょうか?
そんなはずは絶対にありません!
現在のお役所でも、名前を書く順番には我々庶民が「そこまで考えるの」と驚くほどに神経を使っています。
権力順位ができつつあった古事記編纂の時代に書かれた順位には、今以上の注意が払われたはずです。
ここでの順位の入れ替えには何か意味があったはずです。
残念ながら、今の私にはその答えは分かりません。

・・・つづく

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