もしも古事記の神々が人間だったら・・・【23】

シタテルヒメ ≪下≫

シタテルヒメ

『シタテル姫=古代のアイドル』の理由を、「昼も夜も男を魅了する女性だった」と考えたのです。
戦前まで、裕福な農村地域で『理想の嫁』とされるのは『安産・多産系の頑健な女性』でした。つまり『何人子供を産んでもすぐに働ける健康な女性』ということです。
問題は『何人』部分ですが、二人や三人ではありません。
多くの子供を産むには、多くの夫婦関係がなければなりません。
これが夜の魅力です。

いまから二千年も前の世界では、食糧を多く手に入れることができる部族は子供を多く育てることができたはずです。
子供が多いということは労働力が増えるということですから、食糧生産や狩猟の手が更に増えます。人数が増えて自分達の支配する地域からの食糧では不足するようになれば、隣接地域を奪い取ることもできます。
このような世界では、多くの子供を産んだ女性ほど存在価値が高かったはずです。
昼の魅力は労働力ですから健康で体力があればいいのですが、夜の魅力はそれ以外のものです。
一夫一婦の倫理に縛られない時代、男は夜の魅力ある女性により多く接したのではないでしょうか。
この傾向は古墳時代や奈良に都が置かれた時代でも同じだと思います。
それらの時代の食糧生産に関係する女性は、伝承による知識でシタテル姫に憧れたのではないでしょうか。

いまの『安産』祈願は「母子共に健康」を願うのが一般ですが、少なくとも奈良に都が置かれる時代までの『シタテル姫崇拝』は、「男性に求められる女性」祈願によるものだったのではないでしょうか。
古代出雲地域の食糧生産地域(=農村地域)にはこの伝承が残されており、戦前までは極めて広い範囲の若嫁による『講』が維持されていたのだと考えます。当時の『講』のメンバーにこれについて聞いてみたいと思ってはいるのですが、まだ会えていません。
私がイメージするシタテル姫像は、『昼夜共に健康美溢れた明るく朗らかな女性』です。

―シタテルヒメ編 完―

連載はまだまだ・・・つづく

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