古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』【81】

―「神話部分」を読む ― 大国主神 ⑤ 八十神の迫害 – 2 –

於是八十神見。且欺率入山而。
(ここに ヤソガミ 見て。また あざむきて、山に いて入りて。)

それを知ったヤソ神は、再度(オホナムヂを)騙して山へ連れて行き、

=この山がどこにあるかは伝えられていないが、同じ山ではないだろう。
鳥取県日野郡日南町上石見(かみいわみ)の大石見(おおいわみ)神社に、この現場であるとの伝承があります。(山陰の古事記謎解き旅ガイド50頁)

切伏大樹。矢打立其木。令入其中。
(おほぎを 切りふせ。矢をはめ、その木に うち立て。その中に いらしめて。)

大木を切り倒し、その木に大きなクサビを打ち込み、その割れ目に(オホナムヂを)入らせて、

茹矢(やをはめ)=矢は弓矢の矢ではなく、木に打ち込む矢(くさび)。茹(はめ)は、木に打ち込むことを云う。
茹矢打立其木=打ち込んだくさびを挟んだ状態にしておく。
令入其中=大穴牟遅神を、その木の割り開いた間に入らせて。

即打離其冰目矢拷殺也。 
(すなはち その ひめ矢を 打ち放ちて うち殺しき。)

(オホナムヂが)入った途端、そのクサビを外して彼を挟み殺した。

冰目矢(ひめや)=木を割り開いたところに差し込んでおく矢の名。冰目とは木などの割れ目を云う。
拷殺也(うち殺しき)=木の間に挟んだ矢を外すと割れ目が閉じて挟まれて死んだ。

爾亦其御祖命哭乍者。得見
(かれまた その みおやのみこと なきつつ まげば。見 えて。)

そこで再度(オホナムヂの)母神が探し回り、(息子を)見つけた。

得見(見えて)=単純に見えたのではなく、見つけた。

其木而。取出活。告其子言。
(すなはち その木を裂きて。とりいで 生かし。その み子に のり給はく。)

大急ぎでその木を割いて助け出し、息子に言った。

拆其木(その木を裂き)=切り倒した大木の割れ目に挟まれて死んでいるのを見つけて、その木を裂き割って遺体を取り出した。
活(いかし)=手間の時同様に令活方術(いかすわざ)つまり治療法があったのだろうが、それは伝えられていない。

汝有此間者。遂爲八十神所滅。
(いまし ここに あらば。つひに ヤソガミに ほろぼさえなむ とのり給ひて。)

「お前はここにいると、ヤソ神に本当に殺されてしまう。」と言って、

速遺於木國之大屋毘古神之御所。
(すなはち 木の国の オホヤビコの神の みもとに いそがし やり給ひき。)

すぐさま木の国のオホヤビコの神の所へ逃げさせた。

大屋毘古神=五十猛神

爾八十神覓追而。矢刺之時。自木俣漏逃而去。
(かれ ヤソガミ まぎおひ至りて。矢 刺す時に。木の俣より くきのがれて 去り給ひき。)

ところがヤソ神はそこへも追いかけて来た。ヤソ神が(オホナムヂを)弓矢で射殺そうとした時、(オホナムヂは)木の俣に入り込んで逃げた。

覓追(まぎ追ひ)=あとを尋ねて追いかける。 
臻(いたる)=追いつく。
矢刺之時(矢刺す時に)=射ようとして矢を弓にかける。
自木俣漏逃而去(木の俣よりくき逃れて去り給ひき)=しばらく大木の下に隠れていて、その木の根元の間から抜け出して密かに逃げ去った。

・・・つづく

※注:
青字 … 本居宣長『古事記伝』より
赤字 … 古事記おじさんの見解です。

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