勘当が決まったスサノヲはすっきりしたのでしょう、アマテラスの所に別れの挨拶に出かけます。
スサノヲとしては、うるさいオヤジから離れられるのですからルンルンです。大はしゃぎで行くのはもっともなことです。
ところがそれを「国を乗っ取りに来た」と勘違いし、武装して待ち受けたアマテラスもおかしいと思いませんか?
アマテラスは高天原を統治する権威ある神様ですよ。
それだけの立場の神様が「すわ!乗っ取りか?」と武装までしたということが、洞察力と現状認識の甘さ、更には「腹が据わってない」とすら感じさせます。
つまりここでの描写は、アマテラスとスサノヲは兄弟とされてはいますが、実際には相手の気持ちが読めない関係=赤の他人であることを露呈しているのではないでしょうか。
互いに相手の気持ちが分からないのですから、「証」を見せなければ納得できません。そこで「誓約(うけひ)」という、占いのような、勝負のようなことをします。諸説ありますが、古事記では女性が現れた方を勝ちとしています。
スサノヲの持ち物から女性が現れアマテラスの持ち物からは男性ですから、スサノヲの勝ち、つまりスサノヲの言うことが正しい(=乗っ取りの邪心はない)との結論になります。
この「誓約」に関しても様々な解釈がありますが、スサノヲの持ち物から現れたタキリ姫・イチキシマ姫・タキツ姫はスサノヲとアマテラスの間にできた娘で、アマテラスの持ち物から現れたアメノオシホミミ・アメノホヒ・アマツヒコネ・イクツヒコネ・クマノクスビはアマテラスが他の男性との間にもうけた息子とする説があります。
当時は男性も女性も、怪我や病気でぽっくり死ぬ環境で、現代人ほどに「死に対する恐怖」を持ってはいなかったと思われます。ですから彼らは「動物的本能」として「自身の種」を残そうと行動したはずです。
つまり一夫一婦制の概念はなく、無意識に「より良い種」を残そうと行動したと考えられます。
男も女も、どの相手が「より良い種」を残せるパートナーか分かりませんから、自身が持つ「勘」で「良い種が残せる」相手と関係を持つしかありません。
沢山残しておけば、中には「良い種」がある可能性が期待できます。
ですから男女とも「この人は良いかも」と感じた相手と躊躇無く関係を持ったと考えられるのです。
・・・つづく