オオクニヌシ「根の国訪問」【6】

ヤガミ姫の記述は、実に簡単にすませています。

「先の約束通り結婚し出雲へ呼び寄せた。だが彼女は、正妻であるスセリ姫を畏(おそ)れ、生んだ子供を木の股に挟んで里へ帰ってしまった。これによりその子を木股神(きのまたのかみ)と言うが、またの名を御井神(みいのかみ)とも言う」

付け足したように、たったこれだけです。
これはどういうことなのでしょう。

ヤガミ姫は因幡の実力者の娘ですから、彼女の夫となることはその実力者の正当な後継者となる可能性を持ったことを意味します。
当初オオナムチは、そのつもりだったはずです。

ところがより力の強いスサノヲの後継者になれたのですから、因幡の後継者の途を捨てたのではないでしょうか。

出雲へ呼び寄せられた時、ヤガミ姫も因幡勢力も、オオナムチがスセリ姫を「正妻」としていることを知らなかったのではないでしょうか。

170km近くの距離ですから、ヤガミ姫が一人で出雲へ向かったはずはありません。警護や供回りを引き連れた、数十人規模の集団だったはずです。

ヤガミ姫はオオナムチの正妻になることで、夫に父の後継者の道を開いておこうと考えていたのではないでしょうか。

ところが子供ができて後に、スセリ姫が正妻であることを知った。誇り高いヤガミ姫はプライドを傷つけられ、怒り狂ったと思われます。
そこで敢えて出雲の地で子供を産み、その子を産ませた男の地に置いて里へ帰ってしまった。

事情を知った因幡は驚き、怒ったはずです。
だがそこに知恵者がいた。
顔を潰されたと関係を絶つのではなく、その子を通じて出雲勢力との姻戚関係維持を考えたのではないでしょうか。

…つづく

カテゴリー: オオクニヌシ, オオクニヌシ「根の国訪問」 タグ: , , , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。