古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』【32】

―「神話部分」を読む ― 伊邪那伎命と伊邪那美命の神生み ④

次からはまたまたイザナギ・イザナミが生んだ子神の紹介です。

31 鳥之石楠船神 (とりのいわくすぶねのかみ) 別称、天鳥船 (あめのとりふね)
丈夫で早い船の神

32 大宜都比賣神 (おほげつひめのかみ)
「宜(げ)」=「食(け)」で、食べ物の意味。また「食」=「宇氣(うけ)」で「保食神(うけもちのかみ)」も同じ意味。更に「宇迦(うか)」も同じで、全て食べ物を意味するそうです。「大」がついていますから、食べ物に関する最高神ということになります。

33 火之夜藝速男神 (ひのやぎはやをのかみ) 別称、火之炫毘古神 (ひのかがびこのかみ)
更に別称、火之迦具土神 (ひのかぐつちのかみ)
文字通り「火の神」です。

イザナミは「火の神」を生んだことで性器に火傷を負い、寝込んでしまいます。

彼女の嘔吐物から生まれたのが
34 金山毘古神 (かなやまびこのかみ)
35 金山毘賣神 (かなやまびめのかみ)

この二神も、一対で一柱です。
宣長は名前の意味を「枯悩(かれなやまし)=病苦で苦しむ様子」としており、鉱山の神格化という一般的解釈は「金山」の字面から明治以後にできたもののようです。となると神格が分かりません。おそらく「病の苦しみの神」だったのではないでしょうか。

糞から生まれたのが
36 波邇夜須毘古神 (はにやすびこのかみ)
37 波邇夜須毘賣神 (はにやすびめのかみ)

この二神も一対で一柱です。
名前の意味は、波邇夜須=埴粘(はにねやす)=土をねっとりさせる(粘土)から来ているそうです。その形状が似ているからだそうです。粘土の神格化というのが一般的解釈ですが、宣長は「糞は肥料になる」と説明していますから、田畑の土の神格化と解釈する方がいいように思えます。

尿から生まれたのが
38 彌都波能賣神 (みつはのめのかみ)
「彌(み)」=「水」で、「都波(つは)」=「都夫羅(つぶら)」つまり泡立つ状態、また「波(は)」=「麻理(まり)」で、出る状態。つまり泉から水が湧き出ている状態との解釈のようです。ですから河や海とは別の水、つまり「農業の水の神」ということになります。

39 和久産巣日神 (わくむすひのかみ)
宣長は「農業用の土と水の神が紹介されたあとで、しかも食べ物の神である豊宇氣毘賣神の親とされていることから考えれば、穀物を育成する神である」としています。

この神の子が
40 豊宇氣毘賣神 (とようけびめのかみ) ですが、宣長は「すでに食べ物の神として おほげつひめ が紹介されているのに、またこのような神が出てくるのはおかしい。水の神の紹介後に みつはのめ が出てくるのも同様だ。とは言え大昔のことだから間違うこともあっただろう。日本書紀は重複を避けたようで、古事記に紹介されている神が登場しない所が多々ある」と述べています。

以上のような経緯で、イザナミは火の神を生んだことにより亡くなったのです。
古事記は、イザナギ・イザナミの二人が生んだ神の数を三十五柱(みそぢまりいつはしら)と明記しています。でも番号を打ったように、合計は40です。
これに関して宣長も疑問を持ったようで、 2 ・ 3 、 9 ・ 10 、 29 ・ 30 、 34 ・ 35 、 36 ・ 37 の「一対五組の神を、一柱と数えれば三十五柱になる」としています。

・・・つづく

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