オオクニヌシ「八千矛の妻問い」【2】

八千矛(やちほこ)の妻問い部分は、大国主の女好きとスセリ姫の嫉妬を伝えていますが、大国主に王の威厳は全く感じられません。

編者は、ここでスセリ姫が妃に相応しい女性ではないと殊更強調したかったのでしょう。まず嫉妬深い点を上げています。
ヤガミ姫が子供を置いて里へ帰ったのもスセリ姫の嫉妬深さ故としていました。

古事記が書かれた6~7百年代は兎も角として、スサノヲや大国主が活躍した時代に正史に取り上げなければならないほどの嫉妬心があったのでしょうか?

当時の生活は、食べ物を得ることが最優先課題であったはずです。それが確保できれば、次に家族や共に住む一族の身の安全が課題となったはずです。

生まれた時から死ぬまで、食と身の安全が最優先という生活環境ですから、嫉妬心が芽生える素地はなかったと考えるべきではないでしょうか。

嫉妬心が生じるのは、食と安全がある程度満たされてからです。
ですからスセリ姫の嫉妬心の強調は、著者が意図的にしたとしか考えられません。

またスセリ姫の積極性も強調されています。

オオナムチに一目惚れし、関係を持ったあとに父親に紹介するのですが、その紹介の仕方も積極的です。

これはイザナミとイザナギが第一子として水蛭子を生んだ原因が、女であるイザナミが先に声をかけたからだとして女の積極性を諫めた事実に反することで、してはならない行為です。
これも妃に相応しくない点です。

更に、奈良へ逃避しようとした大国主を「酒と色仕掛けで引き留めた」としています。
その結果仲良く暮らしたと結んではいますが、やはり妃らしからぬ行為との印象を与えようとしているように思えます。

…つづく

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