古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』【40】

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―「神話部分」を読む ― 黄泉の国 ⑤

ここに伊邪那岐の命、見畏(みかしこ)みて逃げ還(かへ)ります時に、
その妹伊邪那美の命、「吾(あれ)に辱(はぢ)見せたまひつ」とまをしたまひて、
やがて黄泉(よもつ)醜女(しこめ)を遣(つか)はして追はしめき。

そのありさまを見たイザナギが怖くなって逃げ帰ろうとした時、
イザナミは「「私に恥をかかせた」と言って、
すぐさま黄泉の国の醜女に追いかけさせた。

死の世界、つまり骸(むくろ)になった状態を冷徹に描写したあと、物語は現実離れした展開に変わりました。
「蘇り」の儀式を見られたイザナミは、「見ないで」との約束を破ったからではなく「私に恥をかかせた」と、怒り狂ったのです。
躰中が蛆で覆われていて要所にはイカヅチが取り付いている状態を見られたことを「恥」と受け止めたとする表現は、当時遺体を掘り起こすことは『死者に対する冒涜』という発想があったことを示しているのかもしれません。

かれ伊邪那岐の命、黒御鬘(くろみかづら)を取りて投げ棄(う)ちたまひしかば、
すなはち蒲子(えびかづらのみ)生(な)りき。
こを摭(ひろ)ひ食(は)む間に、逃げ行(い)でますを、なほ追ひしかば、
またその右(みぎり)の御角髪(みみづら)に刺(ささ)せる湯津津間櫛(ゆつつまぐし)を引き闕(か)きて投げ棄(う)てたまへば、
すなはち笋(たかむな)生りき。
こを抜き食(は)む間に逃げ行(まし)き。

そこでイザナギが髪飾りを外して投げると、
すぐさま山ブドウの実になった。
これを(醜女たちが)拾って食べている間に逃げたが、さらに追ってくるので、
今度は右側の髪に付けていた櫛の歯を折って投げ捨てると、
たちどころにタケノコが生えた。
それを(醜女たちが)抜いて食べている間に逃げた。

宣長によりますと、古代の人は長髪を蔦(つた)のように編み絡めており、様々な種類の葛(かづら)や草花を髪飾りにしていたそうです。実の付いたヤマブドウの蔓も飾りにしていたのかもしれません。

タケノコは櫛の歯の形から想像できますが、竹で作られた櫛だったかもしれません。

イザナミがいた死の国の館がどこにあったのかは記されていませんが、死の国(黄泉の国)への出入り口の地名は書かれています。
これは現在の松江市東出雲町揖屋で、この地域一帯は現在でもタケノコの名産地です。
古代からタケノコが育ちやすい地質だったらしく、出雲国風土記にも書かれています。

・・・つづく

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