古事記おじさんの『21世紀の視点で古事記を読む』【30】

―「神話部分」を読む ― 伊邪那伎命と伊邪那美命の神生み ②

子が増え生産力が増し、生活圏が拡大すれば、隣接する生活圏の者と衝突が生じます。
つまり戦争が起こる訳です。
そして戦いに勝った者は、負けた者の生活圏を併合したはずです。
西欧では負けた側の男女とも奴隷とされ、農業や様々な物作りの労働者にされています。

古事記にはそのような記述はありませんから分からないのですが、身分に上下関係を感じさせる表現がありますから、被支配者として生産活動に使役されたのではないでしょうか。
上下関係を感じさせる表現のひとつが 「天(あめ)」 「國(くに)」 です。
これまでにも「天」は使われていますが、単独であり尊称的使われ方でした。
しかし「國」と並んで出てきますと、「天」が上位で「國」は下位と感じさせます。

そのような表現が、水辺に関係する 9 10 の男女神からの派生神の紹介から出始めます。
具体的には 15~18 です。

11 沫那藝神(あわなぎのかみ) <水面に湧き立つ泡の男神>

12 沫那美神(あわなみのかみ) <水面に湧き立つ泡の女神>

13 頬那藝神(つらなぎのかみ) <水面が凪ぐ状態の男神>

14 頬那美神(つらなみのかみ) <水面が波立つ状態の女神>

15 天之水分神(あめのみくまりのかみ) <勝者の住む地域の分水嶺の神>

16 國之水分神(くにのみくまりのかみ) <敗者の住む地域の分水嶺の神>

17 天之久比奢母智神(あめのくひざもちのかみ) <勝者の潅漑(かんがい)道具(ひょうたん)の神>

18 國之久比奢母智神(くにのくひざもちのかみ) <敗者の潅漑(かんがい)道具(ひょうたん)の神>

以上八神はイザナギ・イザナミの孫神に相当します。
そして次の風の神からの四神は、イザナギ・イザナミが生みます。

19 支那都比古神(しなつひこのかみ)
風の神は、7 風木津別之忍男神(かざもつわけのおしをのかみ)として既に登場しています。
実は宣長は、この読み方を(かざげつわけのおしをのかみ)としており、読み方も名前もおかしいとしています。風は神の氣(いぶき)であるから風氣(かざげ)なのだが、氣を木に書き間違えたのだろうとしています。
更にあとで(つまりこの部分のことです)風の神が紹介されるので、 7 は重複であるとしています。
19 がなぜ風の神かですが、宣長は「天照大御神の御息(みいき)から生まれた級長邊命(しなとべのみこと)がある。この神は神の氣(いぶき)から生まれた風の神であるから支那都比古(しなつひこ)と言い、全ての方角から吹く風を意味する」としています。

次が木の神です。
20 久久能智神(くくのちのかみ)
久久は茎の意味で、元々の茎木(くくき)が縮まった読み方だそうです。智は男の尊称で「木の男神」という意味のようです。

次は山の神です。
21 大山津見神(おおやまつみのかみ)
山津見=山津持(やまつもち)で、「山をお持ちになる」という意味のようです。
つまりひとつひとつの山にそれを所有する神がいるのですが、「大」がその全てを支配することを意味しているようです。

そして野の神です。
22 鹿屋野比賣神(かやのひめのかみ) またの名を、野椎神(のづちのかみ)
野を支配しているのは草ですが、草の主たる用途は屋根葺きです。それにより草の字を加夜(かや)と読むようになったようです。鹿屋=加夜で、野を支配する女神を意味するようです。

・・・つづく

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