もしも古事記の神々が人間だったら・・・【31】

タケミナカタ≪その三≫

古事記は大国主と正妻スセリ姫の子供について、また大国主の息子タケミナカタの母親について何も記していません。そこには何かしら意図的なものが感じられます。

その意図とは、アマテラスの孫でもあるコトシロヌシを第一子とすることだったのではないでしょうか。
スサノヲ亡き後の出雲の意志決定者が高天原部族の血筋の者であるとするためです。
こうしますと、高天原部族が日本建国の礎を築いたスサノヲの正統な後継者であるとの証になります。

ところが実際にはスサノヲの孫であるタケミナカタがおり、彼を頂点とする武闘勢力は交渉による併合を拒んでいたのではないでしょうか。
ウクライナ東部のように、血で血を洗う戦いが繰り広げられていたと考えられます。
しかし出雲勢力には不戦派や高天原に寝返る部族もおり、戦況は不利だったでしょう。
とは言え、高天原勢力の被害も大きかったはずです。

ここで重要な存在がスセリ姫です。
スサノヲの娘であり、大国主の妻であり、武闘派勢力の頂点に立つタケミナカタの母ですから、出雲部族は言うまでもなく諏訪から西のスサノヲ支持勢力に対する発言力は絶大だったはずです。
彼女が反高天原諸部族に「出雲救済」の兵力を送るように求めれば、応じる部族は多かったのではないでしょうか。
でもスセリ姫は「これ以上の犠牲を出すべきではない」とし、戦争終結に動いたと考えます。
彼女は、武闘派の頂点にいたタケミナカタを東の果ての地である諏訪へ行かせて武闘勢力を沈静化させ、交渉に応じたコトシロヌシを出雲の地を外れた因幡近くに逃避させ、自らも出雲の東端の地に隠遁することで収めたのではないでしょうか。

タケミナカタはスサノヲの資質を受け継いでおり、武勇一辺倒ではない若者だったと思います。彼は出雲再興のためには、遠隔地に血筋を残して力を蓄えることが必要と考え、母の指示に従ったのではないでしょうか。

・・・つづく

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